平成14年5月22日(水)
放電加工機マニュアル
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1. ワイヤー(電極)と金属(製品)は共に絶縁油中で絶縁状態にある。 |
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2. 放電が発生するとパルス電流が流れ、その間がアーク柱という密度の高い放電状態になる。そこでは数千度の高温が発生し、金属が溶融しだす。 |
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3. アーク柱は品物やワイヤーと一緒に油中にあるので、高温部分に触れた水が爆発的に蒸発する。その圧力で溶融した金属を吹き飛ばす。 |
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4. 新たに油が供給されて細かなクズを押し流し、排除しながら冷却もされる。そして極間が確保され絶縁が回復する。そして@に戻り繰り返す。 |
◎装置写真
コントローラ
加工ヘッド
加工槽内
◎操作手順
1.操作準備
実験室入り口を入って右手側にある配電盤を開け、放電加工の電源が入っていることを確かめます。
電源盤右側にある漏電ブレーカーをONになっていることを確認します。
操作電源(入)を押します。
緑のパイロットランプが点灯し、以降の操作が可能になります。
ワイヤーカット電源のスイッチを(入)にし、ワイヤーが走行することを確認します。(このとき、断線検出棒(a)がワイヤーの内側にないと操作電源がoffになるので注意してください。)確認したら、(切)に戻す。
2.ワイヤーカット装置の位置設定
被切断物をセットし、切断の深さを決めます。加工ヘッド左側のレバー(b)を手前に引きながら、手動ハンドル(c)でワイヤーカット装置を上下させ、(*1)ワイヤーの最終到達位置(*2)を設定します。ワイヤーの位置が決まったら、レバーを元に戻し、歯車に噛ませます。
(*1)クイルの目盛りの下限に注意してください。クイル(d)の目盛りが0以下の下限まで下がっていると、ワイヤーカット装置は下に下がりません。さらにワイヤーカット装置を下に下げたい場合は、クイル(d)のねじを回し、目盛りを上部に引き上げてください。
(*2)ワイヤーの最終到達位置の設定は必ず、行ってください。通常の切断の際は試料台にワイヤーが、やや触れる程度まで引き下げます。最終到達位置が低すぎると、層の下部に設置してあるゴニオメーターを切断する恐れがあります。
クイル(d)のねじを回し、目盛りをゼロに合わせます。目盛りゼロの位置でカチッと音が鳴り、自動的に操作電源が切れます。(また、ワイヤー装置の位置を設定している時点で既に操作電源は切れているかもしれません。)
クイルの目盛りをゼロに合わせた後、もう一度レバーを引き、ワイヤーカット装置をやや上部まで引き上げ、レバーを戻し、歯車に噛ませます。
加工層の下の、加工層の位置を前後させるハンドルと、左右させるハンドルを調節して、切断位置を合わせます。
3.油充填
油排出口(e)に円柱管(f)がきちっとはめる。油注入管のオレンジ色の栓(g)が開いていることを確認します。
もう一度、操作電源(入)を押し、(*3)続けて、加工液(入)を押します。
緑のパイロットランプが点灯し、加工液ユニットのポンプが作動します。ワイヤー部分がすべて油に浸り、加工油の液面が自動で一定に保たれるまで待ちます。ドレンバルブ(i)は全開にしておきます。
(*3)操作電源が入らない場合は、ワイヤーカット装置が上部に行き過ぎていて、レバー(b)と歯車が噛み合ってない原因が考えられます。もう一度レバーを引き、ワイヤーカット装置を適当な高さに合わせ、レバーを戻し、歯車に噛ませます。
4. 加工条件の選定
条件に合わせ、おのおの設定します。以下の設定例は使用ワイヤーが銅線の場合の標準的な値です。
(例) 使用ワイヤー:銅線
パルス巾 :8強
休止巾 :8
送り設定 :3
感度 :4
モード切替 :2
加工区分1 :1
加工区分2 :1
ワイヤーカット:切
サーボモータ :入
加工方向 :下
アダプタ :切
AC100V :切
5. 加工の開始
操作電源を入れる前に確認
決して試料にワイヤーを接触させた状態で加工電源を(入)にしないこと。接触したまま電源を入れると装置のヒューズが切れるので絶対しないこと。
ワイヤーカットを(入)にします。
加工電源(入)を押します。緑のパイロットランプが点灯し、ワイヤーカット装置が徐々に下に下がっていきます。(*4)
(*4)加工方向のスイッチが下に入っているにもかかわらず、ワイヤーカット装置が上に移動する場合があります。原因として送り設定の値が低いことが考えられます。送り設定は必ず2以上に設定してください。また、加工方向がスイッチと逆のまま作業を続けると装置のヒューズが切れるので絶対しないこと。
極性切替はワイヤーが銅の場合、逆極性になっていることを確認します。
放電が始まると、加工電圧、加工電流の値が出ます。加工電圧は50V程度が望ましいので、送り設定を調節して50Vに合わせます。
放電の強さを上げたいときは、(*4)アダプタのスイッチを入にしてください。また、加工区分を調節しても放電の強さを調節できます。加工区分1、加工区分2の組み合わせは(1,1)(1,2)(1,3)(2,1)(2,2)(2,3)の順に強くなります。
ワイヤーカット装置が下がり、切断が進み、クイルの目盛りがゼロになると、自動的に操作電源が切れます。(*5)
被切断物を数回切断する際は(*6)、再度、ワイヤーカット装置を上限近くまで引き上げ、レバーを戻し、歯車に噛ませます。切断位置が決まったら、操作電源、加工液、加工電源を(入)にし、切断をしてください。
(*4)強く上げすぎると、ワイヤーが切れます。目安として、放電の強さの上限はアダプタスイッチを入れた状態で(1,3)程度までにしてください。
(*5)加工電源を切って放電加工作業を途中で中止すると、銅線が切れる確立が非常に高くなります。途中で放電加工作業を中止したい場合は、一旦、極性切替を正極性にしてから、操作電源を切ると、銅線が切れずに済みます。再度、作業を続ける場合は、極性切替を元通り逆極性に戻してください。
(*6)切断中にワイヤーが切れた場合、その試料の切断途中部分をもう一度切りなおすのは至難の業です。別の位置を新たに設定し、切りなおしてください。
6.作業終了操作
切断が終了したら、ワイヤーカットが(切)に、操作電源が(切)にします。
円柱管(f)を排出口から引き上げ、油を抜きます。
被切断物を取り出してください。
電源盤右側にある漏電ブレーカーをOFFします。以上で作業は終了です。
◎注意
一番多いトラブルは放電加工中に銅線が切れてしまうトラブルです。
操作電源が(切)になっていることを確認し、槽内の油を抜きます。
銅線を通す穴は、銅線と同じちょうど2φなので、銅線の先端部を切り、ピンセットを用いて穴に通します。
穴に通したら切れた部分と結わえます。
操作電源(入)を押し、ワイヤーカットを(入)にして、断線検出棒が(a)ワイヤーの内側に行くまで、ワイヤーを走らせます。
ワイヤーが巻き取られて、断線検出棒がワイヤーの内側に行くまで、指で押さえます。
加工電源を入れると、銅線に電流が流れるので、銅線に触らないようにすること。
文責 原 良平