政治献金について考える。

(03年09月15日 月曜日執筆)

2002年はお金のトラブルが政界を賑わした年でした。思い返してみると、受託収賄罪などに問われている鈴木宗男氏や、元事務所代表の所得税法違反事件の責任を取り、議員辞職した加藤紘一氏、秘書の給与詐欺容疑で辞職になった山本譲司衆院議員、最終的には無罪であった田中真紀子氏、秘書給与流用で詐欺罪に問われた辻元清美氏などがあげられます。
こうも立て続けにスキャンダルが発生すると政治家に対する信頼が失われます。幾度となく逮捕者が出ても、リスクを犯して裏金作りに励む行為は終わりそうにありません。政治家には裏金つくりよりも、日本を良くするための政策と行動にもっと力を入れて欲しいです。
そのためにはどうすればよいか、現状を踏まえつつ考えてみました。

政治にはお金がかかります。民衆に自分を宣伝する費用、事務所を継続させる費用、優秀なブレーンを育て続ける費用、ぎりぎりのところで意見を調整するグレーな費用、国会で発言力を強めるために当選し続ける費用、若手議員を育てる費用、すべて政治家にとって必要経費だと私は思います。その経費をどこから入手するかが一番の問題と私は思います。

まず初めに支出から見ていきましょう。政治家が多くのお金を使うときはやはり選挙のときでしょう。一回の選挙でいったいどれくらいのお金が必要なのでしょうか。もちろんお金をほとんど使わないで当選した政治家もいます。クリーンな政治を訴え、当選した前都知事の青島幸男氏や自転車で地方を回る立候補者が例に挙げられます。しかしながら知名度があるタレントならいざしらず、大抵選挙に勝つためには絶対お金が必要です。法定費用についてOffice SPCでは以下のように述べています。

(以下抜粋)

「選挙を戦っていくにあたって,いくらでもお金を使っても良いというわけでは,決してありません。法によって上限が決まっています。これを法定費用といいます。法定費用とは「選挙運動のための支出」を意味します。つまり選挙期間にかかった費用だけではなく,選挙を戦う準備の費用も含まれます。
法定費用は選挙の単位や選挙区によって大きくばらつきがあります。具体例を挙げると,地方選挙においては名古屋市議会議員選挙が約620万円〜790万円,京都市議会議員選挙が約550万円,北九州市議会議員選挙が約300万円,沖縄県議会議員選挙が約540万円,などとなっています。
また国政選挙については,衆議院選挙では

                   公示日の選挙人名簿登録者数
法定費用=人数割額(28円)×―――――――――――――+固定額(1070万)
                      選挙区の議員定数

という公式が成り立っています(選挙区によって多少誤差あり)。
 例えば,衆議院議員選挙・東京1区では約2490万円,参議院議員選挙・東京地方区では約5925万円,となっています。衆議院と参議院での額の差は,参議院選挙は全県区であるという,選挙区の広さの違いが現れたものです。
この法定費用は当然のことながら,守られていることになっています。というのも,法定費用をオーバーすると,当選が無効になってしまうからです。

(抜粋終わり)

公的に賄われる費用の総額は,国政選挙で約200万円,大都市での地方選挙で,約100万円ですから、国政選挙で当選するためには表向きのお金だけで2000万から6000万程度必要となります。議員の多くは大なり小なり、これらの費用を政党助成金や政治献金まかなっています。

また、以下のようなことにもお金がかかります。(政治とカネより)

 ・事務所経費
  家賃、光熱費、公共料金、設備費、文書管理費など
 ・秘書給与・スタッフ給与(国会議員は、公設秘書3名まで公費支給)
 ・政務調査費(少額の公費支給があります)
 ・勉強会・会合経費
 ・交通費
 と挙げた通り、政治を行うための費用がこれだけ必要となっております。この上に、後援会行事の企画や選挙があると、更に費用が嵩みます。政治家が政治を行うためにお金がかかるのです
(抜粋終わり)

次に収入を見ていきましょう。政治献金は企業団体献金と個人献金に分かれます。

企業団体献金
  文字通り企業や団体から出る献金で、受けることが出来るのは、政党だけです。
  一団体から政党への献金は年間最大2000万円と定められています。
(上限150万に制限する法案を2003年提出中)

 個人献金
  個人から出る献金で、政党も政治家個人も受け取ることが出来ます。
  一個人から一議員への献金は、年間最大150万円と定められています。
  また、一個人から発生する個人献金は、年間最大450万円と定められています。

個人献金ならば、年間の上限額が比較的低い数値ですが、政党支部への献金は、2000万円まで可能なため、事実上、企業から政治家への献金がなされてしまっていると言うわけです。ここで、賄賂性の高い献金が生じている問題があります。
 また、政治献金は、確定申告の際に控除対象となります。

次に政治家がいくらくらい政治献金を受け取っているか見てみましょう。企業・団体からいかに多くの政治献金をもぎ取れるかが政治家の腕の見せ所です。以下の1998年に個人献金促進委員会さんの作成したデータを紹介します。有名な政治家が名を連ねています。1億6千万円で1位の鈴木宗男氏、7位の加藤紘一氏はお金集めにがんばりすぎて政界を追われています。2003年9月に総裁に立候補している亀井静香氏も1億4千万円も集めています。きな臭い印象を受けます。是非ともホープページ上で献金の明細を公開して欲しいです。

(以下抜粋)

●寄付(献金)には、個人献金、企業・団体献金、政治団体献金の三種類があります。
●本年収入には寄付(献金)の他に、会費・党費、事業収入、借入金などがあります。
●企業・団体献金の額が多いのに本年収入に占める割合が低いのは、政治資金パーティなどによる高額な事業収入があるためです。また、寄付(献金)に占める割合もそれほど高くないのは、高額の個人献金や業界団体などが組織する政治団体などからの寄付があるからです。

名前
衆参
選挙区
所属政党 当選
回数
本年収入
寄付合計
企業・団体献金 本年収入に
占める企業・
団体献金の
比率(%)
寄付に占
める企業・
団体献金
の比率(%)
鈴木宗男 北海道 自民 5 432,944,647 220,991,290 169,972,011 39.3 76.9
亀井静香 広島6 自民 7 179,559,279 179,484,279 147,904,279 82.4 82.4
森喜朗 石川2 自民 10 321,276,328 225,040,000 144,126,000 44.9 64.0
橋本龍太郎 岡山4 自民 12 280,720,712 280,662,064 136,721,601 48.7 48.7
小渕恵三 群馬5 自民 12 300,439,249 204,944,881 129,624,600 43.1 63.2
綿貫民輔 富山3 自民 10 158,958,135 158,924,917 124,957,137 78.6 78.6
加藤紘一 山形4 自民 9 547,550,376 268,939,011 119,294,000 21.8 44.4
武部勤 北海道12 自民 4 140,249,066 140,246,647 116,641,455 83.2 83.2
小沢一郎 岩手4 自由 10 144,483,922 140,540,000 112,460,000 77.8 80.0
中川昭一 北海道11 自民 5 189,441,334 188,694,836 108,027,627 57.0 57.2
山中貞則 鹿児島5 自民 15 155,569,743 155,500,000 96,840,000 62.2 62.3
伊吹文明 京都1 自民 5 187,344,715 139,925,000 96,680,000 51.6 69.1
松下忠洋 鹿児島3 自民 2 209,651,700 111,127,116 88,307,116 42.1 79.5
江藤隆美 宮崎2 自民 9 147,288,351 144,570,575 86,939,425 59.0 60.1
小沢辰男 北陸信越 改革クラブ 13 215,066,688 125,241,345 83,653,345 38.9 66.8
関谷勝嗣 愛媛1 自民 8 94,394,355 94,394,355 82,614,355 87.5 87.5
桜井新 新潟2 自民 6 174,699,798 106,045,000 81,945,000 46.9 77.3
佐田玄一郎 北関東 自民 3 79,543,335 79,543,335 77,378,035 97.3 97.3
鳩山由紀夫 北海道9 民主 4 121,973,008 121,967,400 77,332,000 63.4 63.4
山崎拓 福岡2 自民 9 315,414,212 208,756,838 77,211,856 24.5 37.0


企業・団体献金ははたしてうまく機能しているのでしょうか?国民にとってもっとも損失なのは企業の利益と国民の利益が衝突したときです。企業が献金するには何らかの見返りがあるからです。たくさん献金しているところほど、お金のフィードバックの図式が成り立つはずです。
例えばしんぶん赤旗(出どころは怪しいですが)によると医薬業界と自民党の癒着を暴いています。
(以下抜粋)
医薬業界の六政治団体が、寄付・交付金として約三十五億円を支出、このなかから自民党や厚生族議員などに献金していたことが、二〇〇二年分の政治資金収支報告書で分かりました。これらの政治団体の献金は医療保険財政を原資にしており、いわば公的資金の還流の構図。医療保険財政の悪化を口実に国民には高齢者の自己負担を増やすなどの医療負担増を押し付ける一方、自民党や厚生族議員などは巨額の献金を受け取っています。


国民政治協会(自民党)
南野知恵子(元厚生労働副大臣)
松本純(落選) 
志帥会(江藤・亀井派)  
新財政研究会(堀内派) 
木村義雄(厚生労働副大臣) 
保守政治協会(保守党)   
山崎拓(自民党幹事長) 
森喜朗(元首相)   
丹羽雄哉(元厚相)   
武見敬三(参院厚労委理事) 
鈴木俊一(環境相)  
伊吹文明(元労相) 
井上裕(前参院議長) 
持永和見(元社保庁長官)
橋本龍太郎(元首相) 
渡部恒三(衆院副議長)
近未来研究会(山崎派)
清和政策研究会(森派)
阿部正俊(前参院厚労委員長)    
7億0663万
2億1000万
3700万
2850万
2750万
2610万
2600万
2200万
2150万
1900万
1500万
1500万
1430万
1200万
1200万
1050万
1000万
1000万
1000万
1000万
日本医師連盟   12億4311万
日本歯科医師連盟 10億3939万
日本薬剤師連盟   2億9341万
日本看護連盟    7億8075万
製薬産業政治連盟  1億0400万
日本薬業政治連盟    5057万
合計       35億1123万

つまり、現在の薬漬けの過剰医療の儲けや高齢者の自己負担金の増額分の一部を政治献金として政治家が受け取り、その見返りに政治家は医薬業界に体制の維持やさらなる市場の開放を約束します。日本の皆保険は素晴らしいことは認めますが、無駄な延命、過剰な医療行為が行なわれている現実は変えなくてはなりません。

アブナイ! 日本経団連の新・政治献金方式では2002年に提案された日本経団連の”政策をカネで買う”献金スタイルに警鐘をならしている。
このスタイルに対して企業は「企業献金は行なわない」と方針を出し、冷静に対応している。
030818朝日新聞より
(以下抜粋)

 政治献金への関与再開に向けて日本経団連(奥田碩会長)が各政党の政策評価基準など献金の指針(ガイドライン)づくりに乗り出したが、主要企業経営者の約2割(19社)が指針の内容にかかわらず、献金は行わない方針であることが24日、共同通信社の調査で明らかになった。
 調査には、法的に献金が禁止されている企業や外資系企業も含まれているが、主要企業100社のうち献金に消極的な企業が2割に上ったことで、政治に対する財界の影響力を強めたいという日本経団連の思惑が空回りする可能性も出てきた。
 調査では、日本経団連が約10年ぶりに献金に関与することを決めたことについて、25社が「妥当」と回答。「やむを得ない」とした30社を含め半数以上が、関与再開を容認し「時期尚早」は8社で「反対」は9社だった。

(抜粋終わり)

● 企業献金ランキング
1、 トヨタ自動車 6、540万円
2、 新日本製鉄 3、000万円
2、 本田技研工業 3、000万円
4、東芝 2、964万円
4、日立製作所 2、964万円
4、松下電器産業 2、964万円
(『THE21』参照)
ランキングで振り返る2001年より

政治を行うための国費として、「政党助成金」という制度もあります。これは、従来の企業献金を廃止する方向にするために、作られた制度です。しかしながら、これは、議席数に応じた各党派への配分がなされますが、無所属議員には、助成金は出ません。また、地方議員には何にも関係しないことにより、結局は、政治献金に頼る方向になるのです。
政党助成金を受け取っていない共産党によると
政党助成制度が導入されて8年がたち、日本共産党以外の政党がわけどりした金額は総額2,491億円にものぼります。 2003年はは317億円を各党が分け合います。

解決策

より多くの政党助成金の支出を求めます。
●財源は累進課税や、相続税の税率を上げて補ってください。(現在の流れに逆行しますが)
●2003年の自民党への政党助成金は145億3千万円で全体収入の59・5%を占めます。企業献金は43億9千万円で18%をしめます。さらに100億円くらい助成金を上乗せして支給してください。議員歳費を上げてください。
●企業献金は出どころをクリアにして浅く広くとってください。個人献金も集います。
●選挙にお金がかかるのであれば、選挙資金は当落に関わらず半額以上公費負担にすべきです。
秘書給与は米国の22名のように多く公費より支給すること。(我が国の国会議員秘書の平均は11名)地方議員も最低一名以上の秘書給与支給は考えるべき。

 ※どの案も、税金からの支出が大きいため、政治家が自ら言い出すことは難しく、なかなか改善されないのが現状であると思いますが、言い出した政治家を私は支持します。

参考資料

Q.選挙にかかる経費は? 
選挙を1つ執行するのに、一体いくらぐらいの経費がかかるのでしょうか。

平成13年7月29日に行われた参議院議員通常選挙についてみると、予算額で約635億円となっています。 この635億円のうち大部分の約556億円が国の選挙の事務を地方公共団体が行うことに対する委託費となっています。 この中の主なものとしては、投票所にかかる経費の207億円、都道府県及び市町村事務費の152億円、開票所にかかる経費65億円(比例代表選出議員選挙に係る名簿届出政党等が新聞に広告を掲載するための経費8億円)、候補者が選挙運動用のポスターを掲示するためのポスター掲示場等にかかる経費の62億円(候補者の政見を載せた選挙公報の発行に必要な経費の32億円)などがあります。 なお、総額635億円の中に臨時啓発に係る経費として10.5億円が計上されており、その内訳は地方公共団体への委託費3.4億円、明るい選挙推進協会への委託費0.4億円、本省3.5億円、放送委託費3.2億円となっており、選挙の期日や投票参加の周知等を行っています。

そんな流れの中、公明党が政治献金を制限する法律を提案しました。
公明党はお布施で成り立ちますから、自民党の弱体化を狙ってのことですが政策は評価します。
(以下抜粋)
公明など与党3党は18日、同一の政党支部に対する同一の企業・団体からの献金を年間150万円に制限するなどの措置を盛り込んだ政治資金規正法改正案を国会に提出しました。
(抜粋終わり)

日本共産党記事より抜粋

自民党

政党助成金と企業献金で8割

 自民党本部の収入は二百四十四億二千八百二十万円で、前年に比べ二十六億八千二百二十二万円減りました。

 政党助成金百四十五億三千四百五十八万円(59・5%)、企業・団体献金四十三億九千四百三十七万円(18%)の二つで収入の八割近くを占めます。小泉総裁グッズの売り上げなどで事業収入が三億三千六十九万円増え、八億七千七百七十九万円(3・6%)でした。

 企業・団体献金はすべて政治資金団体の国民政治協会を経由したもので、日本鉄鋼連盟(九千万円)、日本自動車工業会(八千四十万円)、トヨタ自動車(六千四百四十万円)などの企業・団体から三十億八千九百八十六万円、日本医師連盟(二億八千五百五十万円)、日本歯科医師連盟(四億五千万円)、日本薬剤師連盟(二千十三万円)などの政治団体から十四億二千三百九十五万円を集めています。

 党費収入は前年比三万四千五百九十三人分減って十八億二千百九十五万円(7・5%)です。