犯罪について考える


●はじめに

毎日のようにニュースで流される凶悪犯罪。未だ捕まらない犯罪者。「日本の安全神話は崩れた」と評論家は訴え、我々は治安にいっそう不安を感じるようになった。しかし、マスコミによる断片的な情報はいたずらに不安を煽るだけでは正体の見えない敵に右往左往するだけである。ここでは平成14年版「犯罪白書」のデータを参考にして、昨今の犯罪について考察する。

●刑法犯について

まず、下の第一図を見てもらいたい。日本の刑法犯認知件数は,平成8年以降,連続して戦後ワースト記録を更新し,平成13年では358万件を越えた。さらに悪いことに一般刑法犯の検挙率は戦後初めて20%を下回った。認知件数の約86%を占める窃盗の検挙率の低さが全体の検挙率の低下を招いている。身体的被害を伴うことが多い強盗の検挙率が低下しているのも懸念される。もっとも,入手し得た12年までの資料の範囲内で主な欧米諸国と比較すれば(図2を参照),我が国は,主要な刑法犯の認知件数と発生率が共に低い。その限りでは,今なお安全な国の一つと思料される。しかし、グラフから検挙率が著しく低下していることが見て取れる。検挙率の急激な低下は,その安全を脅かす兆候であり,決して楽観視することは許されないであろう。





平成9年(1997)から犯罪の認知件数が急激に増大している。

この理由として毎日新聞の2002年2月22日 刑法犯認知全国1位の大阪 「不良債権」の清算で急増鈴木龍一氏はで以下のように分析している。

「認知件数急増の背景の一つは、“統計上隠れた犯罪”を表面化させ「警察の不良債権」を清算したことにあると考えている。
犯罪の「認知」とは、告訴・告発、110番通報などによるもので、全体の8割が被害関係者からの被害届。これらを「発生原票」というものに記載すると犯罪統計で認知に計上される。これまでは警察署で被害届を受理しても、すべてを発生原票に記したわけではなかった。書き込むかどうか、警察官の判断が介入したのだ。」

警察内部では「警察改革の一つとして、犯罪統計のあり方を見直したいが、認知件数の増加に伴う検挙率の低下について非難を浴びるだろう。日本の安全神話が崩れ、社会不安も起こすかもしれない。どうしたものだろうか?」という葛藤があったのではなかろうか。しかし、ついに警察改革要綱が発表された平成12年9月(2000)、刑事部長名で「犯罪として問えるものはすべて受理し、犯罪統計に上げること」との通達を出した。そして明らかにその月から刑法犯認知件数が増加した。つまりもともと犯罪は存在したが、警察が恣意的にその数を減らしていたというものである。

さらに認知件数増加の理由として携帯電話普及率の増加が挙げられるだろう。
下の図は加入電話、携帯電話等の累計加入台数の推移である。99年のデータでは携帯電話やPHSなどの移動電話からの受理件数は216万1314件で、前年同期より48万7660件(29.1%)増加している。全国の警察で受理した110番通報の件数が、628万2328件で3件に1件は携帯電話からの通報だったことがわかった。

●少年犯罪について

少年犯罪が各誌をにぎわせており、少年犯罪の増加が懸念されている。しかし、果たして本当に少年犯罪は増加、凶悪化しているのか。検証してみたい。
以下のグラフは凶悪犯の少年検挙人員の推移である。これを見る限り、少年による殺人は増加していない。また、事件の凶悪化についても、昔から一定の割合で存在しており(詳しい事件内容は小浜逸郎著「「男」という不安」を参考のこと)著しい変化はない。ただ、昔と比べ、金が欲しくてとか生活の圧迫感に耐えかねてといった理由よりも、快楽殺人や理由なき殺人の割合が増えている。
また、強盗が増加しており、82%は4人以上の共犯である。


それでは何故私たちは少年犯罪が増加、悪化したと誤解したのだろうか。一つの理由としてマスメディアへの露出の増加が挙げられる。精神科医の滝川一廣氏は興味深い考察を行なっている。少年の殺人事件がどれくらい新聞に報道されたかという比率の年次推移をたどっているのだ。それによると1946年から50年まではわずか1.6%であるのに対し、76年から79年まででは9.6%になっている。メディアへの露出は一貫して上昇しているのである。

強盗事件の増加の原因はどう考えるか?一つの理由に大人が少年と正面から向き合わなくなったことに原因があげられるだろう。マスコミの宣伝によって少年に対し臆病になっている大人。少年が目の前で何をしようが、われ関せずとばかりに見て見ぬふりをするようになった大人。一昔前ならば、電車の床に直接おしりをつけて座っている若者は頑固そうなオヤジに一括されたものである。大人に無視された少年がそのまま放置されれば、さらなる治安の悪化を免れない。大人は少年と向き合うべきである。

●外国人犯罪について

外国人による一般刑法犯検挙件数・人員を見ると,来日外国人では,昭和55年以降大きく増加している。14年の来日外国人による一般刑法犯の検挙人員は7,691人,検挙件数は2万4,259件であり,特別法犯の送致人員は8,522人,送致件数は1万488件である。
 14年における来日外国人の検察庁終局処理人員を罪名別に見ると,一般刑法犯では,窃盗(4,270人),傷害(753人),強盗(372人)の順に多く,道交違反を除く特別刑法犯では,入管法違反(1万326人),覚せい剤取締法違反(830人),大麻取締法違反(256人)の順に多い。
国籍別検挙人数では中国がダントツ1位(51%)2位がブラジル(12%)、3位韓国(7%)。共犯率(2人組以上の犯罪者)は72%。組織ぐるみの犯罪が横行しています。